《MUMEI》 エスパー「別に無欲じゃないですよ? ただ、今の幸せな環境に十分満足してるから、それ以上望まないだけで」 (心、読まれてる?) 慌てる俺を見て、志穂さんはクスリと笑った。 「それから、聞いた愚痴は誰にも言ってませんし、メールもすぐ消してますから、大丈夫ですよ?」 「そ、そう、か」 (忍、口調が、また…) 俺と同じように心を読まれた忍は動揺を隠しきれなかった。 「じゃあ、忘れてるかもしれないけど、弘也君の所に行きましょうか」 「「あ…」」 (忘れてた) 俺とハモった忍もそれは同じだったらしく、すぐに表情を引き締めた。 「多分本人今苦しいと思うんで」 「「?」」 苦笑する志穂さんについていった俺と忍が見たのは 確かにうずくまり、苦しそうな弘也だった。 「た、頼む! トイレに行かせてくれ!」 弘也の膀胱は限界らしい。 「そこでしろ」 「「いや、それはちょっと…」」 (見たくないし) 今度は俺と志穂さんの気持ちが一つになった。 「仕方ないな」 結局弘也は忍によってトイレに引きずられていった。 前へ |次へ |
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