《MUMEI》
黒い忍
「『小さい』言うな!見るな!

うるさい!

うるさいうるさいうるさっ…っ!!」


(何か、すごい事になってそうだな…)


トイレからは忍の声は聞こえなかったが


弘也の悲痛な叫びが絶え間なく、リビングにいる俺と志穂さんに響いてきていた。


やがて、『パシーン』という音が聞こえた後、弘也の声も聞こえなくなった。


そして


(うわ…)


戻ってきた弘也はぐったりしており、頬には、忍の手形がくっきり残っていた。


「いろいろありがとうございました。

後は、私がやります。

見張りも含めた弘也『君』のお友達も私が回収致します」

「は、はい…」


(怖っ!)


すっかり執事モードに切り替わった忍からは黒いオーラが出ていた。


「私は、この後迎えが来るけど…田中君」

「乗せて下さい!」


忍の恐怖に怯える俺は、即答した。


「ちょっと待て祐也」

「な、何だよ!」


忍は弘也を掴んでいる腕と反対の腕を伸ばし、俺の肩を掴んできた。


「お前、これからどうする? このバカ、お前がペットだったと叫んだんだろ?」


…忍の言葉に、俺は固まった。

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