《MUMEI》
謎を残して
「大丈夫ですよ。…志貴ちゃんは、時間かかるかもしれないけど、きっと、大丈夫」


固まった俺の背後から、志穂さんの優しい声が響いた。


「だって、皆、前の夫にペットのように扱われた私を受け入れてくれたから」

「…え?」

「暴力に加え、性的虐待、…最後は監禁状態だったらしいですね」

「…」


忍の言葉に、志穂さんは頷いた。


「田中君は、お風呂でも綺麗だったって、大兄さんが言ってたから…

愛されて、たんでしょう?」

「…っ…」


『旦那様に愛されていた』


それは、俺が一番言われたかった言葉で


涙が、出た。


「だから、…」

「ペットじゃない」

「へ?」


志穂さんの言葉を忍が遮った。


「祐也が旦那様に引き取られたのには、ちゃんと理由がある。

たとえ祐也が旦那様との肉体関係を拒んだとしても、旦那様は祐也を側に置いただろう」

「どういう…意味だ?」

「来週話す。お前はそれまで昔の事を迂濶に喋るなよ」


言うだけ言って


謎を残して忍は弘也とそのトモダチを回収していった。


その後、弘也達がどうなったか、忍は具体的には教えず『もう大丈夫だ』としか言わなかった。

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