《MUMEI》 . 俺は目を開け、ハーフパンツのポケットに入れっぱなしだった携帯を手に取り、電話番号帳を開く。 その、《タ行》に、 新しく登録された名前。 『遠野 百々子』 家に帰って、夢中になって登録したのだ。 俺は、百々子さんの顔を思い浮かべる。 彼女は、気付いていただろうか。 俺が、自分のアドレスを書いていたとき、 緊張のあまり、手が、震えていたことに。 アドレスを渡して、 変な顔をされたらどうしようと、 内心、ビクビク怯えていたことに………。 あんなに緊張したのは、初めてだった。 学校でバカやって、 学年主任に反省室へ呼び出されたときだって、 そんなにビビらなかったのに。 −−−そのとき。 突然、持っていた携帯が震え出した。 俺はビビって、飛び起きる。 携帯は数秒間震えつづけて、黙り込んだ。 沈黙した携帯を見つめていると、 胸が、高鳴った。 …………もしかして、 百々子さん………?? 俺は慌てて携帯をいじった。 《未読メール》が、1件。 送り主は。 「…………のぞみ??」 心なしか、落胆する。 すっかりやる気を無くしたが、とりあえず、のぞみからのメールを読んだ。 今日はどうしてサボったのかな!? 明日はちゃんと来なさいよ。 同じ大学、行けないぞ〜! …………はっきり言って、 どーでもいい内容だった。 俺はため息をつき、メールを閉じる。 なんだ、のぞみか………。 あいつもヒマだな。 つーか、『同じ大学』って………。 勝手に決めるなよ。 俺はため息をつく。 そして、携帯を見つめながら、 百々子さんに電話しようか、と思った。 なんだか無性に、彼女の声が、聞きたくなった。 携帯を操り、百々子さんの番号を表示させる。 親指が、自然と通話ボタンへ移動した。 …………でも。 俺は携帯を閉じ、ベッドの上に放り投げた。 …………今日は、やめておこう。 明日になったら、会えるんだし。 そう言い聞かせて、 俺は再び、瞳を閉じた。 . 前へ |次へ |
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