《MUMEI》
本当の裏切り者
「ま、待てよ。よく考えてみろ。おかしいだろ?俺たちが裏切って、なんの得があるっていうんだよ?なあ?」
ユウゴはユキナに同意を求めた。
ユキナは何度も頷く。
「そうだよ。わたしたちは、たまたまあの日、あんたたちに会っただけだし。それに…」
「黙れ!」
由井はユキナの言葉を遮った。
「そんなこと、どうでもいいんだよ。ミサが、見たと言ってんだ」
「……なにを?」
「ユウゴ、おまえが警備隊の奴らと話してるところをな」

その瞬間、ユウゴにはわかった。

由井を裏切ったのは、ミサだ。

その証拠に、今、彼女は口の端を持ち上げて笑っている。
なぜ、そんなことに彼は気付かないのか。

「由井さん。あなた、騙されてる」
唐突に、ユキナが口を開いた。
「どう考えても、あなたを裏切ったのは、そこのミサって女じゃない!」
「なんだと?」
由井は銃口をユキナに向けた。
 ユキナは一瞬、口を閉じかけたがグッと堪えて次の言葉を続けた。

「じゃあ、その女に聞いてみなよ。ユウゴがいつ、どこでその警備隊と話してた?わたしたちは、あんたたちと会ってから、一度も単独で行動なんてしてないんだから。ねえ?」
「そうだ」
頷くユウゴ。
「騙されないで」
ミサは動揺する気配すらなく、そう言った。
「ああ。騙されるわけないだろ」
由井は当然のようにそう言うと、再び銃口をユウゴに向けた。
「もう、お喋りはいい」
「なに?」
「さっさと出せよ。その右手に握ってるやつ」

言われてユウゴはずっと握っていた銃を服の下から取り出した。

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