《MUMEI》

「何やってんだ…」
「ん…?お風呂いただきます♪」
「もう入ってるだろ…その手に持ってるのは何だ、ワッチューハブ?」
「……ビァ」

コイツは長い金髪を手慣れた様子で上に束ね、入浴剤入りの風呂で半身浴をしながら、片手にはビールを持って気持ちよさそうに風呂に入っていた。

「さくら♪一緒に入る、しませんか♪」
「…入るか…ノーだ」


卑猥な風呂場のドアを閉めると、ガラス越しからもうすでにシルエットの違うリビングの扉を開け、その変わりように愕然とした。


「な…何だコレ…」

部屋には、よく入ったな…というようなベッドがギュウギュウと部屋のほとんどを占領していて、和室の畳の上にどっしりと置かれていた。

「さくら、ハウスキーピング、出来るしたです♪」
「何言ってんだ、スペースってモノを考えろよ…」

風呂から上がったコイツは腰にタオルを巻いてノンキにニコニコしながら部屋に入ってきた。

「どうやったんだ…」
「ドゥ?…あ、これベッド アセンブラ(組立てる)です」


くわしく話を聞いてみると、机を片付けてから、この狭い部屋には入らなかったので、一旦組み立て式ベッドを外で箱から出してから、ちょっとづつ部屋に入れて組み上げていったらしい。


という事は、もう大家にはバレてる…って事じゃないか。


「アイムソー ベリー タイヤード♪」
「そうだな…私も、疲れた」

机の上を見ると、上手い具合に棚が付けてあって、資料なんかがちゃんと整理整頓されていた。

「はぁ…」

その机の前のイスに座ると、その足下には自分ではまず買わないような可愛らしいマットが敷いてあった。




寝巻きに着替えたコイツは綺麗にベッドメイキングをしてからキッチンに行って夕飯の用意をはじめていた。

「あっ…さくら///」
「よしよし…お前、名前何て言うんだ?ワッチュァネーム?」

風呂に入るついでにそいつの頭を撫でてやると、そういえばコイツの名前を聞いてない事を思い出して、私だけ名前を言われるのも何だから聞いてみた。

「Maximilian(マクシミリアン)コールミー マックス///」
「マックス、ダンケシェーン」

風呂場の前に付けてくれたカーテンを引くと、その中で服を脱いで、あの派手に模様替えされてすっかりあいつの家になってしまった風呂に入った。

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