《MUMEI》
過去を聞く覚悟
「話がずれてる」

「あぁ、そうだな」


途中から俺もそう思った。


(…でも)


「俺が一番気になってるのは、エイミーじゃなくて、そこだから」


会ったばかりのエイミーより


親しいこのメンバーが


(特に)


俺は、柊と志貴を見つめた。


「俺は、お前達の反応が怖い。

軽蔑されるのが

…嫌われるのが、怖い」


徐々に視線を足元に向けながら、呟くように俺は言った。


「あの、ね」


口を開いた志貴に肩が震えた。


「うちの母さん、苦労知らずなの」

「は?」×4


全員が、志貴の言う言葉の意味がわからず


ポカンと口を開けていた。


「何もかも、順調な人生なの。でも、傷付いた志穂さんを支える事はできたの。

だから、私も苦労知らずで、辛い、普通じゃない過去なんてないけど

大丈夫、だと、思うの」

「それでいくと、波乱万丈な父親と苦労性の母親を持つ俺は、余裕かな?」


志貴が笑うと、柊も、首を傾げながらも笑った。


「じゃあ私も」

「俺も、余裕だな、な?」


(皆…)


「俺も…て、だから何でエイミーダメなんだよ!」


…頼の不満は結局消えず、頼だけが迷っていた。

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