《MUMEI》

その顔に覚えはない。
しかし、その表情と恰好には見覚えがあった。
虚ろだが血走った両目、その下には濃い隈が見える。
さらに男が着ているのはダウンジャケットだ。
ユウゴの脳裏には、あの晩ユウゴを襲ってきた二人組の姿が浮かんでいた。
そんなユウゴの様子に気付いたのか、織田が前を向いたまま口を開いた。
「知っているのか?」
「いや、わからない。けど、もしかすると俺を狙ってる奴かも」
「なんだよ、おまえ。他にも狙われてんのか?」
男との距離が開いたことを確認してケンイチが声を大きくした。
「俺だって知らねえよ。おまえらに会った晩、あんなダウン着た奴らに狙われたんだ」
「そいつらはどうしたんだ?」
織田の質問にユウゴは少し首を傾げた。
「死んだ、と思うけど。……他にも仲間がいたかもしれない」
「そいつらの正体は?」
「わからない。いきなり現れたんだ。あの時は二人だったが、かなりキレてる奴らだった」
ユウゴの言葉を聞いていた織田はふと思い出したようにユウゴに顔を向けた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫