《MUMEI》

「やっちまうか」
ケンイチの瞳が一気に輝き始めた気がする。
そう思いながらユウゴは「あの角曲がって待ち伏せるぞ」と目で場所を示した。
ユウゴの言葉に二人は視線を動かし、小さく頷いた。

それまでと変わらぬスピードで歩き続け、目的の角を曲がる。
そして三人はすぐに振り返って身構えた。
わずかな足音が街の雑音に混じって聞こえてくる。
そして角の向こうから人影が現れた瞬間、三人は一斉に動き出した。
ユウゴは自分の前に現れた男の顔を思いきり殴りつける。
突然のことに動くことができなかったのだろう。
男はまともに拳を受け、後方へと倒れる。
同時にあと二人、見知らぬ男が倒れた。
「不意打ち成功だな」
斜め後ろから楽しそうなケンイチの声が聞こえる。
その声にユウゴは軽く頷いた。
「ああ。でも、まだいるみたいだぜ」
そう言うユウゴの視線の先には男が一人立っている。
彼はただ無言でユウゴの顔を見つめていた。
「なんだよ、さっきは三人だったじゃん」
ケンイチの声を聞きながら、ユウゴは倒れた男の顔を右から順に確認していく。
そしてあることに気がついた。
「ケンイチ、おまえは誰を殴ったんだ?」
「え、なにが?」
振り返るとケンイチは不思議そうな表情でこちらを見ていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫