《MUMEI》

そしてそれを男たちに見せびらかすようにして「いいだろ、これ」と笑う。
「おまえらは近づかなきゃ攻撃できないだろうけど、俺はこの位置からおまえらをやれるぜ。つまり、俺のが有利」
ケンイチはグリップを握って男たちに銃口を向ける。
しかし、彼らは虚ろな目をゆっくりと右から左へと動かしただけだ。
何も言わない。
「……なあ、聞いてる? 俺の話」
何も反応がないので不満なのだろう、ケンイチがふて腐れた顔をしている。
すると織田に殴られた男が、おもむろにポケットから黒い塊を取り出した。
それは一見して刃物などではないことがわかる。
瞬間、ケンイチが困ったような顔をしてユウゴを見てきた。
「あー……、なあ。こいつらって刃物だけじゃないの?」
「誰が、いつ、そんなこと言たよ」
ユウゴは言いながら自分の前に倒れたまま動かない男に視線を向ける。
この男も何か武器を持っているのだろう。
それが刃物であれ銃器であれ、面倒なことになりそうだ。
この男が目を覚まさないうちにすませてしまった方がいい。
そう思ったユウゴは先手必勝とばかりに地面を蹴った。

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