《MUMEI》
痴話喧嘩勃発
「あっ!!」


(何で何も無い所でつまずくんだ?)


俺は慌てて女の子に手を伸ばし


(セーフ)


転びそうになる女の子を、何とか受け止めた。


(…ん? もしかして、この子…)


それは、さっき俺に抱きついてきた子供とは違う


大人の女の、感触。


「ご、ごごめんなさい!」


パッと離れた女の子は、小さい。


(でも、大熊先輩の例があるし…こう見えて、この子…)


まじまじと女の子を見ていると


「人の女に何してやがる!」


女の子を隠すように、男が現れた。


(…でかいな)


隠すように、ではなく


完全に、俺の視界から女の子は消えていた。


「何とか言いやがれ!」


(何とか…)


今の、俺に言える言葉


「ニャー」


それは、これだけだった。


「テメー、馬鹿にしてんのか!?

つーか、やっぱり、テメー男だな!?

杏(あん)に抱きついて、その後何するつもりだったんだ

この

ブサイクが!!」


(ブサイク…初めて言われた)


「ちょ、海(かい)、誤解だよ!それに、顔見てないのに失礼だよ!」

「何でこいつかばうんだよ!着ぐるみで顔隠してんだからブサイクに決まってんだろ!」

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