《MUMEI》
二人の世界
「大体な、俺はこんな人の多いとこ、来たくなかったんだよ」

「私は、海と来たかったんだもん。」

「…別にそれは、いいけど。

お前、何でもないとこで転ぶし。

すぐ迷子になるし」

「うう…」


(つまりドジなんだな)


「あんま、心配かけんなよ」

「…うん。ごめんね?」

「わかればいいよ」


(それであの海ってヤツは心配性の彼氏で、二人はバカップルなんだな)


完全に忘れられた俺は、冷静に二人の様子を分析していた。


周りは二人の身長差に驚いていたが


柊の両親


大さんと楓さんも、この二人程ではないが、凸凹夫婦だったので


俺はそれほど衝撃を受けなかった。


(二人の世界から戻ってくる前に逃げよう)


俺は、見つめ合う二人に背を向けた


…が


「あ、猫さん待って!」


杏…さん?の声で、足を止めた。


(…何だ?)


恐る恐る振り返ると


(やっぱり睨んでるな)


杏さんの隣にいる海…さんは、俺を露骨に睨んでいた。


(拓磨並だな)


嫉妬の視線に慣れている俺の態度が意外だったのか、海さんは、今度は舌打ちしていた。

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