《MUMEI》
来店
「じゃ、改めまして、二人とも、ようこそ。

拓磨、犬耳持ってきて!」

「喜んで!」


拓磨は猛スピードで、黒い犬耳を一つ持ってきた。


「じゃ、お犬様にして差し上げて」

「はい」

「なっ!」


志貴の言葉に、拓磨は嫌がる海に無理矢理犬耳をつけた。


『お犬様 お猫様いらっしゃ〜い』


それは


来店したお客様に、犬耳又は猫耳をつけ


丁重にもてなす、店の事だった。


ただし


「何で杏にはやんねーんだよ!」


海が抗議するように、カップル客の場合は、彼女には別の役割が与えられる。


志貴は、笑顔でそれを説明した。


「だって、杏ちゃんは、海の飼い主…ご主人様だから」

「えぇ?」

「何だそれ!」

「あ、今わかりやすいのが来るからちょっと待ってね」


(ゲッ、あれは…)


志貴が呼んだのは


「やぁ、祐也、久しぶり!」


茶色の犬耳を付けた柊と


「ひ、久しぶり、田中君」


その隣で、恥ずかしそうにする、希先輩だった。


「二人は『餌やりコース』だから、あっちね」


そして、テーブル席に移動した二人は、向かい合わせに座り、希先輩は柊にお菓子を食べさせ始めた。

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