《MUMEI》

枕の中で納得いかないと文句を垂れてみた。
 桑木 拓は、高校が一緒の同級生である。
頭脳、運動神経と上位クラスに入るのだが、手に負えない不良だったりする。
 椎佳は、名実共に優等生の部類に入る、いわゆる『良い子』であった。
特に彼と面識がある訳でもなく、学校内での有名人として、顔も名前も知っているだけなのだ。
別に拓を意識しているということでもないのに、彼の夢を見たというのは、椎佳にとって納得のいくものではなかった。
 一つ溜息を吐き出して顔を上げ、目覚まし時計に目をやった瞬間、椎佳は息を止めていた。

「うっそー!? 何なのこの時間はッ!遅刻するってばぁ」

半泣き状態で慌ててベッドから飛び下りる。
寝間着を脱ぎ捨て、制服に腕を通す。
櫛で髪を梳くと母親への文句を口にしながら機嫌悪く階段を降りていくのであった。

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