《MUMEI》
一家の主
風邪気味だ、裸で居たせいか。
原因究明は置いておくことにしよう。


それよりも、今の方が大問題である。


「悪いね、無理矢理呼び出してしまって。」

北条さんに呼び出された……というか待ち伏せされたのだが。

瞳子さんもそうだが、高級車を学校付近で横付けされると目立つので止めてほしい。
連れて来られたのは、北条さんの家では無く我が家に近い喫茶店だった。

座っても口に出しにくそうにそわそわしている。
いつも落ち着き無い七生に見えなくもない。


「木下君は、その、七生と家族みたいなものなんだろう?」


「はい……」

まあ、あながち間違いではない。


「結婚……ってどうかな?」


「はい?」


「七生だよ、学生結婚ってやっぱりいけないかな?
海外赴任するから七生も連れていきたいんだ。説得してくれるかい?」


「結婚……瞳子さんと?」


「そう。」

七生と瞳子さんが結婚?


「七生に言ったんですか?」

頭が真っ白になるとは、このことか……。


「説得してくれる?」


「え……えと、七生にはまだ早いと思います。」

いやだ、
いやだ、
……いやだ、
いやだよ……!


「勿論、結婚は七生の意志もあるし勝手に決めようとは思わない。
ただ……七生との距離感がまだ計れない、いや、嫌われてるんじゃないかな。」

そういえば修平さん、少し痩せたかもしれない。

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