《MUMEI》
「はっ!? 覚悟とか何様のつもりじゃ」
「ふふ、俺様ですよ。絶対、俺のこと好きになってもらうんで」
「ふん、出来るもんならやってみろや」
顔を上げた安月の顔が愉しそうなのが癪に障る。
ソッポを向いて強気な態度で返した。
「はい、頑張ります」
爽やかな笑みで彼は手元のジョッキを煽る。
中には生ビールが入っている。
従順でガタイの良い、それでいてどことなく可愛らしい後輩に告白を受けた先輩の府末 彰治(フマツ ショウジ)も焼酎の入ったグラスをグイッと傾けた。
喉を通る液体が躯を熱くさせる。
此処は良く二人で立ち寄る個人経営のヒッソリとした居酒屋だ。
仕事帰りに寄るのが二人の日課となっている。
今日も例に漏れず、他愛ない話題で盛り上がりながら居酒屋に来たのだが、酒を飲み進めて幾等かした頃合に安月が爆弾発言を漏らしたのだった。
安月曰く、「俺、先輩のこと愛しちゃってるんです。あ、LIKEでなくLOVEですから」だそうだ。
そして、話は先にと飛ぶのである。
彰治が熱くなった顔にコップを当て、ボーと事の発端を思い返しているとすぐ目の前に安月の顔があった。
「うわっ、何してんだ!」
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