《MUMEI》

 
 
「分からないから、知りたくなるのよ」
若菜が答える。


「悩みなら先輩が受け止めてやっから。」
春道は樹の肩に手を載せる。肩がすっと軽くなるのを覚える。
自然とスキンシップを取れるのが彼の強みかもしれない。


懐の深さに込み上げるものがあった。


「すいません」
申し訳ない気がして謝る。

「遠慮しなくていーのよ
この人私と同じ世話やき一族だから。」
若菜は口角を美しく上げた。


結局、若菜に促されアドレス交換をした。
人に頼ることはひとつの壁であったが、彼女達にはいつか心を許していまいそうになる。

いつだって明るく笑い飛ばしてくれる彼等はメールの中でも変わらない。




言えない言葉を飲み込んで行く、
許されようとは思っていないが、生きながら償わなければならない原罪、
口に吐き出してしまいたいという欲求、ジレンマに悩まされる。





新たに樹の中で武装を固める。
彼等は踏み越えてはいけないストッパだ、
知ることは罪。
彼にとって信じられるのはいつもアヅサだった。
たとえ他人のものだったとしても、これは揺るがない。
揺るいだとき、
予測がつかない。

それは、破滅に酷似しているからだ。

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