《MUMEI》

「どうしようかな…」
「ろーしたのぉ?」
「ん…克哉さんの声が聞きたくなったの…」

何かあったら連絡しろと言われて、持たされていた携帯電話をポケットから取り出すと、それを見つめながら掛けようかどうしようか悩んでいた。

「ん〜……」

克哉さんの番号を眺めていると”一人で抱え込まないでくれ”と、この前言われていた事を思い出した。




公園のベンチに腰を落ち着けると、膝にくるみちゃんを抱えながら克哉さんに携帯をかける。

プルルル♪

(本当にいいのかな…こんな事で電話しちゃって…)

何度目かのコールの後、あの低くて心が落ち着く克哉さんの低い声が電話口から聞こえてきた。


『どうした、アキラ?』
「あっ、克哉さん///」

聞こえてきた声にホッと胸を撫で下ろすと、自分のシャツをギュッと掴み、さっきあった事を話し始めた。


「あの…さっきスーパーでナンパされて…強引で凄く…怖かったです」

思い出したら泣けてきて…それを見ていたくるみちゃんはそんな僕の頭をヨシヨシと撫でてくれた。

『大丈夫なのか!?』
「はい…くるみちゃんがヒーローになって…助けてくれました」
「兄ちゃん、おりぇ格好良かったんらよっ!」

僕にギュッと抱きついてきたくるみちゃんは、僕の顔の側の携帯に向かって得意げに電話の向こうのお兄ちゃんに話しかけていた。

『あぁ…よくやったなくるみ、でもあまり無茶はするなよ』
「うんっ///わかった///」

僕に抱きつきながらお兄ちゃんの声を聞いて満足したのか、ニコニコと笑いながら僕の膝にチョコンと座ってきた。



『アキラはこの前もナンパされたって言ったな』
「はい…別に、女性の格好してるワケじゃないんですけどね…何故か今回も女性に間違われて…」

くるみちゃんの頭を撫でながら、僕の何がいけないのかを思い出してみても全く思い当たる節も無かった…。

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