《MUMEI》
ハッと我に返った彰治は人差し指を上下左右に落ち着きなく動かし、どもりつつも言い切る。
だが、敵の方が一枚も二枚も上手だった。
「あれ、府末さんは獣姦OKな人なんすか? 意外だなあ」
「っな訳あるか、ボケッ! お前にとっちゃ性別は恋愛に関係ないのかってことだ。説明されなくても解ってくれ、頼むから」
アハハ、と呑気に笑いビールを飲む安月の頭を向かい側の席から腕を伸ばして叩き付ける。
前屈みで叩かれた箇所を両手で押さえ、安月は主人に叱られた犬のように肩を落とす。
「すんません。俺、すげぇバカだから。……同じ種族同士で恋愛するのって、そんなにおかしなことっすかね? 性別に捕われてたら自由な恋愛なんて出来ない気がするんです」
「そ……っか。馬鹿は馬鹿なりに色々考えてんだな。あーー、殴って悪かったよ。それに、テメェみたいな馬鹿は嫌いじゃあない」
安月は怖いぐらい真剣に宣ってきた。
頭を抱えていた手が彰治の前髪にかかる。
彼の指を髪が通り抜けていく。
正直、彰治には安月が言わんとすることを理解出来なかった。
それでも、彼がちゃんと物事を考えていることには酷く安堵した。
「じゃ、好きっすか?」
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