《MUMEI》

「日本の人ですか?」
「違うよ〜台湾人なんだ、でも日本語喋れるよ〜ねぇねぇ♪」
「あぁ…えっ///」

その人は僕の隣にいきなり座ってくると、嬉しそうにニコニコ笑いながら僕の手を握って話しかけてきた。

「あの時の事、覚えてる?僕は目に焼き付くぐらい覚えてるよ///」
「あ…あの時って?」

そんな事言われても…僕はこの人を見た覚えが無かった。

きっと人違いなんだろうな…。

「あの…」

僕がそう言おうとしていると、その人はニヤッと笑い、僕にそっと耳打ちしてきた。



「…ぇ///」


何で…知ってるの…。


この前…克哉さんと一緒に行った…あの場所の事。


「僕も居たんだよ♪」
「ぁ///」

あの場所は暗くてあまり見えなかったから、どんな人が居たかなんて覚えてないけど…。

…僕のあの姿を見たって事///



「なにー?お友達なの?」
「あっ!!」

その存在をすっかり忘れていた膝の上に座ったくるみちゃんが、不思議そうな顔で僕と彼の顔を交互に見つめていた。

「う…」
「うん、お友達だよ♪」
「えっ///」

僕が答えに迷っていると、彼はあっけらかんとくるみちゃんにそう答えてしまっていた。

「名前は”林 智明(ハヤシトモアキ)”って書いて”リン・ヂーメイ”だよ、ジェイミーって呼んでね♪」
「ジェイミー♪」
「え…林!?ともあきって…」
「僕の親が日本が好きでねぇ」

彼はそう言って僕の膝の上のくるみちゃんを抱き上げて自分の膝に座らせると、両腕をバンザーイとさせてあやしてくれた。

「ジェイミー♪おりぇはね、くるみちゃんなんだよぉ///」
「こんにちはくるみ♪」

人見知りをしないくるみちゃんは、さっそく彼にギュッと抱きついてすっかり懐いてしまっていた。

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