《MUMEI》
疑問
智が謎の言葉を残して死んでしまってから二週間、俺と椋はあの言葉の意味を理解できずにいた。





『柊には気を付けろ』


確かに智はそう言った。

あの事故現場に柊がいて、事故に何らかの形で関係しているということか?

それとも、前に俺が相談したことについて何か分かったんだろうか?

いくら考えてみても
分からないことばかりだった。




今となっては智に詳しい内容を聞くこともできない。俺達だけでこのまま考えていたって埒が明かないし、、直接柊に聞くしかないか…。

そう決断をした俺は、早速柊に聞いてみることにした。



「柊、ちょっといいか?」

「何かしら?」

「智が事故に遭った日
、何処で何してた?」

「え〜っと、あの日はたしか……学校から家に帰ってその後はずっと家で本を読んでたと思ったけど、それがどうかしたの?」

「いや…、柊が事故現場にいたんじゃないかと思って……」

「何故そう思うのかしら?」

「智が一人になるのはいつだって椋に聞いたんだろ?」

「えぇ、確かに聞いたわ」

「何で、そんなことを聞いた?」

「あら、それは愚問ね。二人っきりで話がしたかったからよ」

「何で?」

「……そんなことまで
言わなきゃいけないの?」

「できれば…」

「じゃあ、秘密」

「………」

「誰にだって、いいたくない事の一つや二つあるでしょ?もういいわよね。それじゃ」

「…あぁ」





……確かに、言いたくない事は誰にでもある。

でも、柊のは言いたくないというよりは、言えないというように見えた。



あー、また疑問が残っちまったな。




俺には、智が一人になる時を聞いた理由の他に、もう一つの疑問があった。





それは、あれは本当に
事故だったのかということ。



疑問に思った理由は、
今回の運転手の証言も、俺の家に突っ込んだ時の奴とまったく同じ証言をしたから。


これは、偶然か?
それとも…、誰かが仕組んだ?


でも、仕組まれたんだとしたら、何の為に誰がどうやって?





…あー、ダメだ。
いくら考えたって、やっぱりわからないことだらけだ。

俺はひとまず、今自分の考えていることを椋に相談することにした。

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