《MUMEI》
赤い薔薇
     =土曜日=

俺は、早速椋を呼び出して相談を持ち掛けていた。



「――っていうふうに俺は考えてるんだけど、椋はどう思う?」

「………」

「椋?」

「……あの、さ、俺、智の家の近所のおばさん達が話してた智の死に関すること、聞いちゃったんだ。」

「…どんな話だ?」

「何かさ、智んちの玄関前に真っ赤な薔薇が置いてあったんだって」

「薔薇?」

「そう。しかも智が事故に遭う5日前から」




俺は急なわけの分からない話に困惑した。

智が事故にあう5日前から薔薇が置かれていた?一体どういうことなんだ?

取り敢えず椋に話の先を促すと、彼は声を少し落として前屈みになりながら「で、ここからが怖いんだ」と言った。
俺も自然と前屈みになり、体が強張る。



「…何だよ?」

「それが…その薔薇、智が事故に遭う5日前には5本、4日前には4本って、カウントダウンみたいになってたって…」

「ってことは事故が起きてからは…」

「うん。事故が起きた日からは1本も置かれてないって…」



…なんだよ、それ。
カウントダウンのように置かれた薔薇?

俺は、あり得ないと思いつつも思ったことをそのまま言葉にした。




「…それって、まるで智が事故に遭うのを予告してたみたいじゃねぇか!」

「俺もそう思う。おばさん達は『智くんのお母さんは"ただの悪戯"だと思ってたみたいよ』って言ってたけど……」



椋は俯きながらそう言った。

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