《MUMEI》 事故……?椋の話が、自分の考えが確かなものだという思いを強めた。 「…やっぱり、智のは事故じゃないと思う」 「俺も…。でもさ、さっき黎夜も言ってたけど、誰がどうやって?そして、何の為に?」 椋も俺もすっかり答えに詰まってしまった。運転手の証言のように勝手にハンドルが動き、ブレーキが利かないなんて状況、誰かが意図的に作り出すことができるだろうか? そんなことが人間にできるとは思わないが、俺の頭の中には1人の姿しか思い浮かばなかった。 「……柊」 「え?海帆ちゃん?」 「あぁ。どうやってかはわかんねぇけど、やっぱり何か関係あるとは思う」 「海帆ちゃんかぁ…」 「まぁ、所詮俺の予想に過ぎないけどな」 「うん。…でも、俺も海帆ちゃんが怪しいと思うよ」 「え、ずっと柊の味方してたじゃねぇかよ」 椋の思いがけない発言に、俺は驚いた。ずっと”海帆ちゃんは怪しくない”と言っていた椋が柊を疑うなんて…。何があったというのだろう? 椋は、暫く顔を伏せて黙りこんだ。しかし、そのうちすっと顔をあげて話し始めた。 「そりゃあ、最初は本当に海帆ちゃんは全く怪しいと思わなかったよ。でも…」 「でも?」 言葉を詰まらせた椋の顔は、少し青ざめていた。 「なんかさ、最近海帆ちゃんが俺のことよく見てんだよね。しかも、睨むような感じで。それで、視線に耐えかねて海帆ちゃんの方を見ると、何でもないように笑いかけてくれるんだけど、目が笑ってなくて。作り笑顔なんだよね」 一気にそれだけ話した椋は、最後にポツリと「今は海帆ちゃんが怖い」と言った。 智の死の原因解決について話していたのに、結局疑問が増えてしまった。 俺達は、何の結論も出せないまま、それぞれの家に帰宅することにした。 もうすでに、次の恐怖が迫っていることも知らずに…。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |