《MUMEI》

先生と私は車の中に、残された。なんだか、先生のオーラが恐くて、話し掛けられない雰囲気だった・・・

「・・・・・・あの。」


次に続く言葉が出てこない。『すいません』って言ったら更に雰囲気が悪くなる気がする。

「広崎・・・。まだ時間大丈夫?」

思ったより優しい声で、話しかけられたので安心し、「少しなら。」
と答えた。


学校からは少し離れた、駅の裏側に大きな公園があった。そこの駐車場に車を止めた・・・。

先生は降りる様子もなく、ただ黙っている。


「先生?」


「・・・何で危ないことするの?」

親が子供を叱るよな、感じだった。叱られた私は素直に反省するしかなく、肩を落として俯いた。


「成原の制服を見た時、身震いがした・・・。初めて逢った時におまえが着てた制服で・・・それがズタズタに切り刻まれてた・・・。」

先生はハンドルを強く握った。その手が震えている。

「ごめんなさい。」

そう言って、私は先生の震えている手にそっと触れた・・・。

無事にここにいられることの方が、奇跡なのかもしれない。あの時、あのまま蓮見先輩に事務所へ引きずりこまれていたなら、私は今頃・・・
考えるだけでも、恐ろしかった。

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