《MUMEI》
次なる恐怖
椋と話をしてから、俺は毎日智の事故のことについて考えていた。

智の死を予告するように置かれていた真っ赤な薔薇…。

不自然な柊の言動。


いったい何を意味しているんだ?
もちろん、薔薇の方は死へのカウントダウンだということは分かってる。

でも、本当にそれだけなのか?
それに、柊の方だって智の死にどう関与しているのかまったく検討もつかない。

一体どうしたら……



「黎夜ぁ〜!黎夜ぁ〜!!」

「椋?」



思考を中断し、声のした方を見ると、俺の元に椋が血相を変えて走ってきた。そして、俺の肩をがっと掴み、がくがくと震えながらこう言ったのだ。



「た、大変だよ。俺…、どうしよう!黎夜、助けて!!」



明らかにただ事ではない。椋は、完全に何かに怯えている。とにかく、話を聞いてみなければ事情が分からないため、椋に何があったのかを話すよう促した。
すると、椋は半泣き状態になりながら、小さな声で話し始めた。



「…俺の家にも、置かれてたんだ」

「え?」

「こ、これが……っ」



そう言って椋が差し出したのは、真っ赤な薔薇だった。

これって、まさか…

いやな考えが頭をよぎる中、椋は言葉を続けた。



「今朝、学校行こうとしたら、玄関前に置いてあったんだ。…俺、智みたいに死んじゃうの?」

「…椋、そういうことは考えるな!今朝は、今朝は何本の薔薇が置いてあったんだ!?」

「……さ、3本」

「3本…」

「なぁ、これって3日前ってことだよな!?俺、嫌だよ!死にたくねぇよ!!」



完全に椋はパニックになり、冷静さを失っていた。死ぬかもしれないという恐怖に追い詰められているんだ。
俺だって、椋にそんなこと考えるなって言ったけど、もしかしたらっていう思いはある。

けれど今は、そんなことを考えてる場合ではない。とにかく、椋を落ち着かせて何か対策を練らなきゃいけない。



「椋、ひとまず落ち着け!」

「だって!もしかした「椋!!…いいか?落ち着いて俺の話を聞け」」

「黎夜…」

「大丈夫だから、落ち着いて聞けよ?」

「…分かった」

「俺は、これから3日間椋の家に泊まりこむ。だから、俺から絶対離れるな!」

「…うん。ありがとう…」



そう言って、椋はすっかり気を落として教室に入っていった。
俺はそんな椋の背中を見つめながら、「絶対に助けてやる」と呟いた。

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