《MUMEI》

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俺は瞬き、いや……と呟いた。


「言ってないよ」


すると、登は苛立ったように『なんで?』と尋ねた。


『なんで、のぞみに言わないんだよ!!あいつ、将太のこと、すっげー心配してんのに』


心配??


「なんで、のぞみが心配すんの??」


理解出来ない。


登は呆れたようにため息をつき、やや落ち着いた声でつづける。


『………のぞみが志望校、一緒にしようって言ってたの覚えてる??』


俺は記憶をたどる。

そういえば、そんなことも言っていた。


「覚えてるよ」


サラリと答えると、登は低い声で尋ねた。


『なんで、そんなこと言ったのか、分かってんの??』





…………なんでって。





「ありゃー、冗談だろ??」


俺の返事に、登はキレた。


『本気で言ってんのかよッ!!お前、わかんねーの!?のぞみはな、のぞみは………』


そこまでまくし立てて、不意に黙り込む。忙しい奴だ。

俺はため息をついて、のぞみがなに??と先を促す。
聞きたくなかったけど、それで登の気持ちが鎮まるならと、仕方なく尋ねた。

登は自分を落ち着かせるように、深いため息をついて、それから言った。





『のぞみは、お前のことが好きなんだよ……』










…………どうして。





どうして、こう上手くいかないのだろう。





登の言葉を聞いて、はっきりと気付いた。





登はのぞみが好きなんだ、と。





だから、のらりくらりとのぞみの好意をかわしている俺が、





許せなかったんだ、と−−−−。





なぜ、面倒な方へと傾いてしまうのか。





俺は、どうしていいのかわからず、





気の利いた返事をすることが、出来なかった………。





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