《MUMEI》

教室へ戻る途中、私は今にも泣き出しそうだった。

先生に突き放されたような、気がしていた。
教室へ向かう廊下が、果てしなく長く感じられて・・・
途中にある小窓から、電線に止まる『すずめ』を眺めていた。

「奏・・・?」
呼ばれて振り返ると、百花が立っていた。

私は無言で、少しだけ笑顔を作った。

「どうしたの?」
不安そうな表情に、百花は優しく尋ねる。
私はなんでもない、という風に首を振った。

「奏・・・・・・。私、名波先生の家から、笠原先生が出てくるの見たことあるの。」

「え?」

自分の耳を疑った・・・。

「近くを通った時に、たまたまね。すごくびっくりしたけど、どんな関係かなんて、聞けないし。」

「で、でも、名波先生は・・・女の人に。」
そこまで言って、私は自分の口を手で押さえた。いくら百花にも、先生の秘密は話せない。

そんな心配をよそに、百花は話しを続けた

「私もなんとなく分かるよ。先生は女の人苦手だってこと。だから、笠原先生とは恋人とかそういう関係じゃ、ないと思う。」

百花は恐る恐る、ゆっくり話た。

「じゃあ、どんな関係なの?」

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