《MUMEI》

銃を持った男がその銃口をケンイチからユウゴへと移動させる。
その動きが終わるより早くユウゴは男の腹部に蹴りを放つ。
しかし男は反射的だったのか、わずかに体を後ろへ引いたらしくあまりダメージを与えることがでかなかったようだ。
それでも銃口を逸らすには十分だ。
ユウゴは銃を握っている男の右手を掴むと思いきり捻りあげる。
男の手首の関節が妙な音をたてたが、ユウゴは気にせず力を込め続ける。
男は堪らず悲鳴をあげ、銃を地面に落とした。
するとここぞとばかりにケンイチが男の顔を蹴り上げる。
男は顔面にケンイチの足を浴び、うめき声なのか悲鳴なのかわからない妙な声を出しながら力無く頭を垂れた。
「あっぶねえな! おまえ、俺に当たったらどうすんだ」
動かなくなった男を地面に叩きつけながらユウゴはケンイチを睨む。
しかしケンイチはただ楽しそうに笑いながら、地面に倒れた男の背中を踏みつけている。
その目は大きく見開かれているが虚ろで、何も見えていないかのようだ。
「なんだ、こいつ……?」
ユウゴが呟いた時、すぐ近くで怒鳴り声が聞こえた。
ハッとして振り向くと、短刀を持った男がユウゴ目掛けてその刃を振り下ろそうとしている。
慌てて後ろへ避けようとしたユウゴだったが、倒れた男の足に引っ掛かり、そのまま尻餅をついてしまった。

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