《MUMEI》

どうしたもんかと思案していると、

ドンッ

「っ、すんません…」

「どこに目をつけてるんだ。」

「はぁ!?」

いくらぼぉっとしてたからといってその言い草は無いだろう、そう思って振り返った。

「なんだ、病人以外に用はないぞ。」

切れ長で吊り気味の鳶色の目が俺を見下ろす。185cm以上ある阿騎より同じか少し高い。

何気に睨みあっていると、
「申し訳ありません、神林先生が往診から戻られました。」

若い看護婦が男を呼びに来た。

「ふん。」

思いっきり人を見下しながら去っていった。

「嫌なヤツ〜」

腹は立ったがどうも行き先に自分の目的もいるようだ。

………よし、バレないように着いていこう。

そうして靴音高らかに去っていった男を追った。

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