《MUMEI》

カツカツと早足で歩いていくスーツの後を人や物を間に挟みながら追う。

「入るぞ。」

ある部屋の前でノックもせずに男は入って行った。

少し遠目から様子を見てると人通りがなくなった。

そーっとドアに近づいてみる。

…………

流石に会話内容までは解らないが何かもめているようだ。

ガタンッ、カラカラ

何か鈍い音と床に何かが落ちる音がした。

好奇心と心配でそっとドアノブを回す。

中を見ると患者と話をする場所の奥についたてがあり、その奥から声がする。

「相変わらず生意気だな、貴様は、ただの妾腹が!」
「どうしたんですか?今日はいっそうご機嫌が悪いですね?」

「黙れ!貴様はまたジジイ共の下で媚びでも売るのが似合いだ!」

「兄さんのしてきたことと余り大差はないですよ?」
???!

深くは解らないが尋常でない様子に、物陰からついたての中を覗く。

!!!

「貴様は俺より下にあるべき存在だと、忘れたなら思い出させてやるぞ。」

「いつもの事、ですが?」

阿騎がデスクにうつ伏せに押し付けられ、その後ろにあの男が覆い被さっていた。

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