《MUMEI》

「お前は俺より下なんだ!」
そう言って男は腰を動かすと同時に阿騎の腰を右手で自分に引き寄せる。左手は机の上に阿騎を押し付けたままだ。

「少しは慣らしてからにしてくれないんですかね?」
「貴様に?必要なかろう。」
そう言っていっそう深く腰を沈める。

「くっ…。」

阿騎は一瞬顔をしかめたが次にはもう皮肉めいた笑いを浮かべていた。

「せっかちですね、女性の相手は大丈夫ですか?」

「貴様っ!」

カッとなった男は体を離すと阿騎の頬を殴った。

思わず出ていきそうになったがそれより早く阿騎が口元に指をあて静かにするように相手に促した。

「兄さん、ここは病院ですよ?」

「…そうだな、では次の医学会、お前の論文楽しみにしているぞ。」

剣呑な空気はそのままに男は踵を返した。

「やばっ!」

辺りを見回して診療用のベットの下に滑り込む。

カツカツ、バタンッ!

目の前を靴が通りすぎ乱暴にドアがしまった。

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