《MUMEI》
挑発
.

それから義仲の顔を見る。


「ねぇ、義仲君…」


「なに?」


義仲はルカさんの顔を見て、いたって普通の声で尋ねた。ルカさんは言葉を選ぶように、ゆっくりつづける。


「鷲造さんのことだけど…」


義仲はカウンターテーブルに肘をつき、だらし無く頬杖をつく。

そして、ルカさんの言葉を遮った。


「関係ないね」


その声が、冷たい。

怒ってると、すぐわかる。

ルカさんは困ったようにため息をついて、義仲君…と諭すように呟いた。


「関係あるでしょう?いい加減、意地を張るのはやめたらどう?宗一君からも、いろいろ聞いてるわよ」


彼女の言葉に、義仲は肩をすくめて見せた。


「意地なんか張ってねーし。だいたい、アンタにしろ、宗一にしろ、首突っ込む権利はないだろ?」


そう突っぱねた義仲の表情は、ひどく冷たく感じた。

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