《MUMEI》

「・・・。」


私の質問に答えず、俯いている。

わからないということなのか、予想していることが、口にはだせないことなのか・・・。

先生は私に『気持ちを持って触れたことない。』って言ってた。ということは、『気持ちがなければ、触れられる。』ってことだ。


「奏、あまり考えこまないでね。先生たちは大人だから、私たちにはわからない部分があるんだよ。」

私は、少しだけうなずいて、涙を堪えた・・・。



放課後。

私は、どうしても真相を知りたくて、先生の住んでいるアパートの階段で、先生の帰りを待っていた。

もし、二人がそういう関係なら、私がリハビリする必要なんてないから・・・


かなりの時間、待っているが、先生が帰ってくる気配はなかった。時計を見ると、すでに8時を回っている・・・。
さすがにおばあちゃんが心配するから、今日は帰ろうと腰を上げ、階段を降りた。

一階まで降りて行くと、アパートの入口あたりで声が聞こえる・・・。私は身を潜めた。


「はい、今日の分のお金。私の体はもう、樹なしじゃ生きられないみたい。」

「・・・。」

聞き覚えのある声は、笠原先生・・・話しかけている相手は無言だけど、名波先生に違いなかった。

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