《MUMEI》

ふうっ、と息をつけたのも束の間。

「誰だい?」

衝立の奥から歩いてきながら阿騎がこちらに声をかけた。

!!!!

「そこにいるだろう?」

確信めいたように言われ、バレないようにこの部屋を出る手段のないオレは諦めてベットの下から出た。

「リュウ?どうしてここに?」

「いや、弁当届けようと…。すまん、なんか、覗きみたいなことしてしもて…。」

「………ちなみにどの辺りからいたのかな?俺はてっきりナースかと。」

「割と初めから…」

「そう。」

…………


やっぱり気まずい…。


「べ、弁当おいていくな!」

無理矢理立ち去ろうとすると、

「リュウ、俺の事軽蔑した?」

不意に投げ掛けられた問いは何か含みを帯びていた。
「いや?オレは事情も知らんし…、んー難しいのは苦手や!とりあえず帰って飯作ってるわ!」

少々無理矢理やったけどニッと笑って部屋を出た。

キョトンとした阿騎の顔が珍しくてちょっと面白かった。

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