《MUMEI》

「何だ?」


「何?」


ざわつく会場。


観客全員の視線がクロに集まる。










クロはコート中心に立つと、


右手で拳を作り上に掲げた。


その姿に会場は唖然とするが、


応援に来ていた赤高の選手たちは違った。










「あは!!」


「さすがクロさん!!」










クロの右手には、


赤高の選手たちから貰ったリストバンド。


そしてそこには、


皆の名前。


もちろん、









翔太の名前も…










(…見てるかな?


てか、


見てて。


これは始まり。


僕がプロを目指すって決めてから初めての試合。


だから、


この試合は決意表明。


お前の靴と、


お前の名前は僕が必ず連れていく。


お前が納得してくれる試合をしてみせるから、


だから、


しっかり見ててね。)











「何だあれ?」


「ふざけたヤツだな〜。」


ベンチからリトルハンドの選手たちがクロを笑って見ていた。


「何それ〜?
カッコいいと思ってんの〜?」


その中の1人がクロをやじった。


「ん…。」


その言葉に反応するクロ。


クロはベンチを見たまま、


「主役級だからね。」


そう言ってベンチに戻った。


「…?」

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