《MUMEI》

「・・・俺の体を買ってもらってる。あの人はそういう人だから。」


「買うって?・・・」
私は、意味がわからなくて、独り言のようにつぶやいた。

買うって?買うって?


この間の成原さんのように、おじさんが女の子にお金払ってする行為と同じことなの・・・?
そんな私の疑問は先生の次の言葉ですぐに答えがでることになった。



「・・・セックスしてお金をもらうってことだよ。」


先生の直球に私は、持っているかばんを落として、先生の上着の裾を掴んだ。

「だ、だって、先生。女の人に触れないって言ってたのに!」

「気持ちがなく、割り切れてる人には、問題ないんだ。笠原さんのことは女だと思ってない。ただ・・・欲求を満たしてくれるだけの相手だよ。むなしいだけだけど・・・」


私は聞きたくなくて、耳をふさいで首を振った。

「騙したの?リハビリとか言って、からかったの?」

「ちがう・・・。」

私は力尽きたように、その場に座りこんだ。

「広崎・・・。俺は相手に何かしてあげたいとか、想ってほしいとか・・・そういう感情が前にでると、本当に触れないんだ。でもおまえとは出会った時から、そういう感情があったのに、触れたんだ。おまえだけなんだよ。」

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