《MUMEI》
一発の弾
「……ふん。俺の銃だ。奪っていきやがって」
ユウゴは言い返すことができない。
彼の言葉通り、奪っていったのだ。
言い訳しないユウゴを見て、由井はニヤっと笑みを浮かべる。
「やっぱり、おまえは敵だよ」
そう言って、彼はガチャっと弾を装填した。
そして指が、引き金にかかる。
反射的にユウゴはユキナを突き飛ばし、自分も横へ跳んだ。
直後、重たい破裂音が倉庫内に響いた。
ガガァンと、並んでいた棚がドミノのように倒れ、積んであった箱からカンパンの袋や缶詰が散乱する。
ショットガンから放たれた、たった一発の弾で倉庫内はメチャクチャになっていた。
ユウゴは自分の心臓が壊れたのではないかと思えるほどの速い鼓動を頭の中に聞いていた。
由井は本気だ。
つい二日前までお互い、笑い合っていたのに。
なぜ、こんなことに……
「反動のせいで、狙いが定まりにくいな」
由井は手に持ったショットガンをしげしげと眺め、再び持ち上げた。
「ま、慣れるだろ」
「…ユキナ。平気か?」
「平気なわけないじゃん」
見ると、ユキナは散らばったカンパンの袋に埋まっていた。
ユウゴは彼女を助け起こしながら由井を見た。
とにかく、あの武器をどうにかしなければ。
「ユキナ」
「なに?」
「あの女の方、頼む」
ユキナはミサを見て頷いた。
「あの鞄だね。わかった」
頷くユキナを確認したユウゴは、一度大きく深呼吸をして由井と向かい合った。
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