《MUMEI》

展望エレベーターは、眼下に新宿のビル群を見下ろしながら、天空に昇ってゆく…。



アンパンマンは、その絶景に心弾ませることもなく、ただ厳しい眼差しで思案を続けるだけだった。



(告発者がダミー会社の存在目的まで知らず、単に原材料の納入先が、実在しない会社であるとリークするにとどまった…。


そういう背景があるなら、おそらく内部事情に詳しい社員ではなく、アルバイトかパート従業員……組織の末端にいる関係者の仕業だ…。


だが告発者が、T物産の裏事情を知りつつ、故意に情報を伏せておいたとなれば話は違ってくる…。


情報を小出しに売る……または会社を揺することを目的としているからだ…。)



不穏な可能性が頭をよぎると、アンパンマンの眉間に深いシワが寄った。

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