《MUMEI》 情報椋が死んでからの一週間、俺は犯人だと疑われた。当然といえば当然なことだ。寝るとき、部屋には椋と俺しかいなかったのだから。 それでも、椋のお母さんが説得してくれたりして、警察からは何とか解放された。 そして、それからはひたすら情報を集めた。 情報収集をし続けて12月に入った頃、やっぱり柊が二人の死に何かしら関係しているという結論にいきついた。 分かった事は3つ。 1つ目は二人の死に顔には共通点があるということ。 病院で聞き込みをしているとき、智が何かに怯えたような顔をして死んでいた、と担当だった看護婦さんがこっそり教えてくれたのだ。 椋の方は、言うまでもなく俺自身が見ている。 2つ目は、それぞれが死ぬ5日くらい前から、近くの花屋で髪の長い美少女が真っ赤な薔薇を買っていたということ。 俺は、これが柊であると確信している。特徴を聞いても、柊だとしか思えないのだ。 そして、3つ目は椋が長い髪の毛を握って死んでいたということ。 死ぬ間際、とっさに髪を引きちぎったのかもしれない。椋は、片手にしっかり髪を握っていたのだ。その髪は、椋を殺した犯人のものであることに間違いはない。 俺の推測を聞いた人間に『何故、それらのことから柊が二人の死に関係していると言えるんだ』と聞かれると確かに説明できない。 でも、俺はこれらの事を一人で調べたし、誰にも話してない。 だから、柊がこの3つの情報を知っているのはおかしいんだ。 あいつは、椋が死んでから5日くらい経ったとき、俺に言ったんだ。 「剣持君も高岡君と同じ表情をしていたなんて不気味ねぇ。それに剣持君、髪の毛を握っていたのでしょう?あれはきっと、犯人のものなんでしょうね」 俺はこれを聞いた瞬間、驚きと恐怖で言葉が出なかった。そしてその後、薔薇を買った少女のこともあいつは語ったんだ。 2つ目の情報は、花屋の店員に聞けば分かることだ。それに、柊自身が薔薇を買ったことを遠回しに暴露したのかもしれない。 でも、1つ目の情報は無理だ。智の方は俺のときと同じように看護婦さんが教えてくれたとしても、椋の方だけは絶対に知ることが不可能なんだ。3つ目の情報だって、知ってるなんてあり得ない。 だって… 椋の目を見開いた死に顔を見たのも、握られた髪の毛を見たのも俺一人だけなんだから。 俺は、確かに椋のお母さんが来る前に目を閉じてやった。 髪の毛も、重要な手がかりだと思ったから、椋のお母さんが下で電話をしている間に抜き取って、自分のポケットに隠した。 だから、椋のお母さんでさえ、椋が目を見開いて死んでいた事や髪の毛を握っていた事は 知らないんだ。 俺が喋らない限り、絶対に知られることのない情報。 …それを何で柊は知っていた? 考えられる理由は1つだけ。 ――二人は、柊にコ ロ サ レ タ ? 前へ |次へ |
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