《MUMEI》 ・・・・手にとった不思議な石を強く握り、アランは席を立つと目の前で微笑っているヴィヴィアンを見る。 「どうして私にここまでしてくれるのです。初対面のこの私に、それにあなたに何の利点があるのです? それ以前に、あなたは本当に軍の人間なのですか?」 いままで彼女はアランに情報を与えるだけで、彼女の益にはなっていない。だと言うのに何かしらの要求もしてこないと言うことにアランは違和感を覚えずにはいられなかった。さらにアランの違和感を強くさせたのはヴィヴィアンが放つその何かにあった。彼女はアランたちと同じ軍服を着てはいるもののアランたち軍人とは異なる雰囲気を漂わせていて、匂いが違っている。 「いまは秘密・・・と言うのはどうかしら。 まぁそれまでは、頭を悩ませておくことね」 「あなたと言う人は、だんだんとあなたという人が分かってきた気がします」 ため息混じりに言った。 真剣に尋ねたと言うのに、あのように返されてしまうとそれ以上攻め入ることが出来なくなってしまう。それも彼女のような美貌を併せ持っているのならなおさらだ。 女性らしさを欠く服装で、その方面に疎いアランでさえ美しいと思ってしまうほどだ。男性なら大方アランと同じ考えに至るだろう。 先ほどまでの緊迫した雰囲気は薄まり、和やかなものへと変わり始めたと思えば、それはすぐにかき消されることとなる。 前へ |次へ |
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