《MUMEI》
のぞみのこと
.


見学会には、色んなひとが参加していた。

俺と同じ高校生だけでなく、大学生か短大生と思われるような年上っぽいひとも結構いた。

ほとんどが、女の子だけど。

初めは、空気がキャピキャピしていてたじろいだが、だんだんとそれに慣れてくると、男の俺もみんなと打ち解けることが出来た。

見学会は、学校の授業の説明や、講師陣の紹介がほとんどと、午後になると講義を見学したり、実際に犬と触れ合うことも出来た。

見学会に出席したみんなは、嬉しそうに犬と戯れる。

そんな中、貴重な男子ということもあって、俺は犬の次くらいに、女の子たちからチヤホヤされた。


「どうしてドッグトレーナーになろうと思ったの??」


「どこに住んでるの??この学校から近い??」


「カノジョとかいるの??」


見学中にも関わらず、矢継ぎ早に見学会と関係ない質問が飛び交う。
彼女たちの勢いに押されながら、俺は笑顔でテキトーに流した。


長いようで短い一日が終わり、家に着いた頃には、俺は疲れ切っていた。


母さんは見学会の話を聞きたがったが、俺はホントに疲れていたので、夕飯を摂ったあと、先に部屋で休むことにした。


自分の部屋のベッドに制服のまま倒れ込み、深いため息をつく。





…………疲れた。



でも、楽しかったかも。





久しぶりに犬に触れ、やっぱり癒された。

そして、再確認したのだ。


この夢を、実現したい、と。



柔らかい布団の感触にウトウトしていると、


ズボンのポケットに入っていた携帯が、鳴った。


俺は飛び起きる。





…………もしかして、



百々子さん??





そう考えてから、頭の中ですぐに否定した。





…………そんなわけないか。





冷静になって、ポケットから携帯を取り出し、相手を確認する。



ディスプレイには、《ノボル》の文字が浮かんでいる。





…………ほらね。



だから、ありえないんだってば。





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