《MUMEI》

顔を上げるとすぐ目の前にまで短刀が迫っている。
ユウゴは無我夢中で顔の前で両手を振った。
直後、ガッと何かが当たる衝撃と鋭い痛みが走った。
同時にパンッと何かが弾ける音が響く。
あまりに相手が近くにいるため状況が理解できないユウゴは、とにかくその場から離れようと体を横に転がした。
地面にあたった右腕がひどく痛い。
ユウゴは顔をしかめながら起き上がると、自分の右腕を見た。
手首から肘にかけて皮膚が裂け、赤い血が溢れている。
刺されたのではなく斬られたようだ。
ユウゴは視線を動かし、さっきまで自分がいた場所を確認する。
そこには折り重なるようにして二人の男が倒れていた。
上に重なっているのは、短刀の男だ。
しかし、彼に握られていたはずの短刀は少し離れたところに放られており、男の後頭部にはねっとりとした液体が染み出ていた。
「なんだ、つまんねえ」
ポツリと呟いた声の方を見ると、そこにはいつの間に回り込んだのか、ケンイチが銃を持ったままこちらを見ていた。
「おまえ、生きてんじゃん」
「ったりまえだ!さっきからなんだ、おまえ。下手すると俺に当たってたぞ!」
ユウゴが睨むとケンイチは「当たったらおもしろいなと思って」と肩を竦めた。
「はあ?」
ユウゴはいらだたしい気持ちでケンイチに近寄ろうとした。
しかしその肩を織田につかまれた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫