《MUMEI》

  
(何で味の無いものが食べられるんだろう…)

僕はその味のないお米をモグモグ食べながら、そういえばこの国に初めて来た時に食べた”おにぎり”というものの中に入ってたものだという事に気が付いた。


それに気付いた僕は、棚にあったあの黒い良い香りのするカーボン紙みたいなやつ、さくらに聞いたら”シーモス(海の苔)”と言っていたそれを取り出してみて、さくらがやっていたようにちょっと火で炙ってからそのお米を巻いてみた。


「アッハ、ヤ(そうだ)」

一緒の棚の中にあった、来たときに見つけてて美味しそうだと思っていたパラパラ(ふりかけ)をお米の中に入れてみた。

その食べてた”おにぎり”の中にも味の付いた何かが入っていたからなぁ。

食べてみるとそれとはちょっと違うカンジはしたけど、何かこっちの方が美味しいようなカンジがした。




(さくらに色々教えてもらわなきゃな…)

食べるものの事もそうだけど、こっちでの生活の仕方や色々な事。

僕の住んでいる国の常識とは全く正反対だったりするから、この国に住んでさくらと仲良く暮らすには知っておかなければならない事がたくさんある。


そういえば、こっちに来る前に友達に教えてくれた、日本の女の人がしてくれるって言う”ひざまくら”という伝統があるみたいなんだ。

それは、女性の太もも辺りに男性が頬ずりしても女の人が怒らないで頭を撫でてくれる、っていうまるで天国のような伝統があるらしい。

きっとそんな事が出来るのは仲が良いって証拠なんだよね。

さくらはしてくれるかな…僕らの関係だとまだ無理かな…。



僕のスペースは未だにこの台所周りだ。

”ふとん”を敷いてそこに寝ていると、朝や夜中にさくらに踏まれて起こされたりする。

そんな状態だけど、まんざらでも無かったりする。

腰痛が治ったような気がするし、何よりも下から眺める月明かりに照らされたさくらの姿はとってもブエナビスタ(良い眺め)だったから。

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