《MUMEI》
過去になる存在
忍はゆっくり、かなり深いため息をついた。


そして、変わらぬ穏やかな声色で


「一度しか言わねーからよく聞いて下さいね、クソガキ」


(…ん?)


一部、口調を変えた。


「「あれ? 今…」」

「俺は祐也にとって過去の人間になる。

祐也の未来に

お前の下で働く祐也の側に


俺は、いない」

「それ、どういう…」

「話は以上です。これ以上余計な事は訊くな。

…俺を怒らせんな、クソガキ

わかりましたね?」

「いや、…」

「わかったよな?」

「…ハイ」

「祐が口で負けたの初めて見た」


(キレた忍は無敵だしな)


巻き込まれたくない俺は、無言を貫いていた。


…のに。


「なぁ、祐也!忍さんが言った意味全然わかんないんだけど!

二人は付き合ってんだろ?

だって忍さん祐也にメロメロじゃん!」


(バカ)


祐の叫びに、俺はうつ向き、その場を去ろうとした忍は足を止めた。


「俺が、祐也にメロメロ、ねぇ…」


何の冗談だというように、馬鹿にしたような笑みを浮かべた忍は、今度こそ、その後祐が何を言っても一切無視してその場を去っていった。

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