《MUMEI》
演技派
「そろそろ戻るぞ」

「…納得いかない。意味わかんない」

「それでも、忍の言葉に偽りは無いぞ」


忍を弁護するつもりは無いが


忍の言葉は、紛れもない真実だった。


「えーと、つまり、田中君と藤堂さんは、期間限定の付き合いって、事かな?」


自信無さげに葛西先輩が確認した。


「そうです」

「だー! おかしいだろ、それ。忍さんは祐也大好きだし」

「別に忍は…」


『俺を好きじゃない』


そう言いかけて、俺は迷った。


(今、言っていい事か?これ)


忍は自分はいずれ過去になると


いずれ、俺と別れるというような事を言った。


しかし


俺が嫌いだとは言わなかった。


忍が俺を嫌いな事は、誰も知らない。


「あれで祐也を嫌いなら、かなり演技派だよね。

俺、母さんほどじゃないけど、観察眼自信あるのに。

それに、雅樹も」

「あぁ。自信は無いけど、あれで田中君を、好きじゃないとか

別れようとしてるとか

…信じられないな」


(忍の演技はすごいからな)


「まぁ、卒業したらわかりますよ」


俺はそれだけ言って、話を終わらせ、二人を教室まで誘導した。

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