《MUMEI》
文化祭一日目終了
教室に着くと、志貴は既に戻ってきていて


志貴に連れられていた団体客はいなくなっていた。


「遅れてごめん」

「どうせ祐のせいでしょ」


志貴は笑って許してくれたが、実際、俺達はかなり遅れて帰ってきたから


祐と葛西先輩は、最後の客で


クラスの皆は、掃除や売り上げ・備品チェックをしていた。


「やっぱり犬耳一個足りないわ」


葛西先輩から犬耳を受け取りながら、緑川は


首を傾げるのではなく、うんうんと頷いていた。


(何で納得?)


「ヤンキー犬とお嬢主人がお持ち帰りしたらしいの。

…随分強引にクラスの男子に『お願い』して」


首を傾げる俺に、志貴が説明してくれた。


「それって…脅し?」

「多分。丁度、真司君も拓磨も私も祐也もいなかった時で、誰も逆らえなかったみたい」


(確かに怖そうな外見だったしな)


この学校には髪を染めている生徒はいるが


あんな金髪はいないし


ピアスをしてる生徒もいるが


あそこまで多くなかったし


何よりも、目付きが悪かった。


(明日は俺は劇があるし…でも)


見かけたら、返してもらおうと思った。

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