《MUMEI》
天空に近く彼に遠く
アラタは時折屋上に出る。

普段は金曜の六時間目だけは開いている。
教頭が天気のいい日は入って行き、開けっ放しにして帰り際に閉めていくのだ。

夕日を好んで眺めに行く。
昼と夜の境、曖昧さが堪らなくなる。


空に近い。

飛んで行けそうなオレンジの侵食色がいい。
いいと言うのは「死に時」を述べる。

まだ日はそんなに落ちていない。

雲が地上から墜落しそうだ。





雲に潰されてしまうのもいい。
過去現在未来、全てを脱ぎ捨てたくなる。


セータを脱いだ。
シャツの第三釦までを外した。
襟が風を受けて膨らむ。

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