《MUMEI》
愛は会社を救う(101)
「山下さん、私との関係…つまり、自分がレズビアンだってことを藍沢にカミングアウトしてね。それで藍沢に"裏切られた者同士、慰め合わないか"って誘ったの」
「つまり青地さんの代わりに、藍沢さんと関係を持とうとしたわけですね」
「ええ。そしたら…」
「そしたら?」
私は少しせっつくように、続きを催促していた。
そこには、呆れるくらい知子の話に関心を示している自分の姿があった。
「藍沢、その誘いに応じたの。意外なくらいあっさりと…。あの娘ったら、男性も女性も大丈夫だったのね」
やや冗談めかしてはいたものの、知子の口調には、明らかに私に対する皮肉が込められていた。
もちろん"男性"とは、私のことを指しているのである。

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