《MUMEI》 愛は会社を救う(102)知子は微笑を浮かべながら私の顔を見つつ、やんわりと問い詰めるように言った。 「赤居さん、あなた藍沢に、"仕事以外のこと"も仕込んだわね」 「仕事以外のこと?」 何を言っているのかわからない。…そんな風を装って、少しとぼけた返事をしてみたものの、そこは洞察力の鋭い知子が相手。全く歯が立たなかった。 「だって彼女、あなたとそっくりの"攻め方"をしていたわよ」 情報を完璧にインプットし、それを少しのロスも無く正確に伝達できる…由香里の能力は、オフィスでもベッドでも驚異的なものだったのだ。 そして男にとって、自分の性技を面と向かって云々されることは、この上なく照れ臭いものだった。 しかし知子の言葉を聴いて、私は自分の企てが、由香里によって完璧に遂行されたことを確信したのだった。 前へ |次へ |
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