《MUMEI》
・・・・
 朝から陽は柔らかく、暖かく王都を照らしていた。王宮も久しくその陽を浴び煌めいている。王宮の端に建てられている宿舎二階の一室で、エド、カイル、二人の騎士は密談の真っ最中だった。
 「それで、お前はアース教会に忍び込んだのか。随分と無謀なことをするな、顔を見られていたらどうするつもりだったんだ。教団に連行されることは避けられないだろう」
 「そのことなら心配ないさ、顔は見られていない。教会の連中は馬鹿ばかりだったからな」
 勝ち誇った笑みを浮かべ、エドは窓に腰かけるカイルへと目をやった。椅子から立ち上がることはせず、声を飛ばす。他人に聞かれてはならぬ話だと言うのにその声はあまりにも通り過ぎていた。
 カイルが腰かける窓の向こうには兵士たちの訓練模様が広がっている。訓練のために作られた刃の無い剣を構え、気合いをのせた叫びと共に交わし合う。
 「それならいいんだが。それで、危険を冒した成果はあったのか」
 眼下の兵士たちを冷めた目で傍観していた彼は端的に尋ねる。
 まどろっこしい話は抜きに要所さえ知ることが出来ればいい、そう考えていた。
 彼と言う人物をよく知っているエドも、それに最も即した形をとる。黒地の布に包んでいた数十枚の紙を机に放り出す。数十枚からなる紙には、宮廷神官ハイムの素性からいままでの奉仕内容、裁いた罪人たちのことが事細かく記されていた。

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